あけましておめでとうございます!12月編です!
Akai Solo - Verticality//Singularity / Only the Strong Remain
今年もPhiik x Lungs、ELWD、Roper Williams、Blockheadなど、ここぞという場面での客演が目立ったブルックリンのラッパーAkai Soloが前作『Spirit Roaming』以来、約1年ぶりのアルバムを2作同時リリース。Twenty Fifth NightやWavy Bagels、iblss、ArgovなどAkai作品ではおなじみのプロデューサー陣がバックアップ。Earl Sweatshirtもそれぞれのアルバムに1曲ずつめちゃクールなビートを提供している。他MCのフィーチャーは一切なし。イヤー・エンド・リストに今すぐぶち込むべきアブストラクト・ヒップホップの傑作。例によってアニメからのリファレンスが多いオタクなAkaiだが、アニメ『ゴッド・オブ・ハイスクール』のキャラクターから取られたと思われる"Dan Mori"では、X(旧Twitter)でも何人かのリスナーが反応しているように"We only name disasters after women because of misogyny"というコンシャスなラインを忍ばせている。2作品を通してスピーチのサンプリングは随所に見られ(そのせいで権利的な問題に引っかかってしまったらしいのだが…)、特に『Verticality//Singularity』では日本でも有名なフェミニズム理論家であるベル・フックスや「権力の文化(The Culture of Power)」で知られる教育学者リサ・デルピットといったアフリカ系女性の声が取り上げられている。"All Yours"は2021年に亡くなったフックスに直接的に捧げられた曲だ。両アルバムは現在ストリーミング・サービスでの配信はなく、Break All Recordsのサイトから直接購入可能です!
DAVID CHRISTIAN/COMET GAIN - REKKORDS!
6月編でアーカイブ・コレクション『The Misfit Jukebox』を紹介したUKインディー・バンドComet Gainの最新作。Comet Gainといえば、これまでも音楽や映画の具体的な作品への言及でおなじみであったのだが、本作はDavid Christianの愛するミュージシャンあるいはレコードという物体そのものへの偏愛が詰まったコンセプト・アルバム。有名/無名を問わない様々なアーティストへの勝手なトリビュート&オマージュで満たされたオタクの良い≒悪いところが出まくっている愛らしい小品だ。Bandcampでは(よせばいいのに)各曲にライナーノーツが付け加えられている。説明過多なやつ、好き。Sarah Recordsの記念すべきカタログNo.1、The Sea Urchins "Pristine Christine"のイントロをそのまんま引用した"INDIE POP!"は、今現在インディー・ポップと呼ばれるジャンルへの愛憎渦巻くユーモラスな曲。二人のBILLを取り上げた"BILL FOX/BILL FAY"は、メランコリー&サッドなSSWジャンルへの素敵なオマージュ。レコード売った金で新しいレコードを買ってしまうようなヴィニール・ジャンキーによるジャンキーのための強迫観念的ローファイ・レコード(デジタル販売のみ)です。これだからオタクは!!
ご存じ!僕が最も好きなバンドのひとつGalaxie 500のフロントマンであり、Lunaのフロントマンであり、ノア・バームバックの映画によくちょい役で出ていることでもおなじみDean Warehamの2013年ライブ・アルバム。Bandcamp限定でアナログ盤も販売された(完売)。ギャラクシーの名曲群を中心に、同年リリースされたソロ名義での初EP『Emancipated Hearts』収録曲も披露する素晴らしいパフォーマンス。1曲目"Tugboat"は僕が最も美しいと感じる曲のひとつだが、このたった2コードの単調なメロディーに当時のギャラクシーのメンバーたちとプロデューサーKramerがかけた魔法は永遠に有効なのだと改めて感じる演奏であった。また日本でライブしてくれないかなー。
グラスゴーのアヴァンギャルド・ロック・トリオStill House PlantsのメンバーFinlay Clarkのソロ・デビュー作がAD93から。Touch&Goに2枚の強烈なアルバムを残したマス・ロック・バンドStorm&Stressや同郷グラスゴーのカルト・バンドLife Without Buildingsから強い影響を受けたというStill House Plantsの20年作『Fast Edit』は個人的に非常に印象深いアルバムであった。本作はClarkがバンドとしてのショーの合間にiPhoneや4トラックのレコーダーに録音した、慰めのような或いは怒りのような音楽のスナップショット。オープナー"morning-star"の厳かな室内楽的雰囲気は、次の"jesus' son"(デニス・ジョンソンの小説から取られているのだろうか?)での乱調のギターとバイオレントなボーカルへと一気に暴発する。エモとスラッジ・メタルとトム・ウェイツが出会ったようなClarkのラディカルなボーカル・パフォーマンスは、ピアノのメロディーが美しい中盤の"strong"において極に達する。もうセンスしか感じない。年ベス入り待ったなし!
コペンハーゲンのアンビエント・アーティストJonas Torstensenによるプロジェクト。1月にDiscreet Musicからリリースした初のLP作品『Tryghed』もピアノ主体の宅録アンビエントで大変グッドでしたが、今回は同様の感触を引き継ぎつつギターや歌声を取り入れたローファイ・フォークで尚良い。劣化した磁気テープの朧げな質感がたまらない。
ミシガンのベッドルーム・ラッパーJ FisherがDeathbomb Arcからリリースした最新作。先行シングル"1-11-GAS-v6"が公開されたときにFisherはXで「これは2005年型のホンダ シビックの車内で録音した」とポストしており、アルバム全体が車内で制作されたのかどうかはハッキリとはしないのだが、どちらにせよ観測範囲ではGraham Lambkinの傑作『Amateur Doubles』以来のシビック録音だ。9月編で取り上げたKris Gruda『Plays for You』は車の運転席で録音されていたが(車種不明)。quinnやCities Avivに通じる内省のエクスペリメンタル・ヒップホップ。
リッチモンドのラッパー/プロデューサー/シンガーソングライターLIL UGLY MANEの2曲入シングル。メンフィス・ラップの影響が色濃い2012年のデビュー作『MISTA THUG ISOLATION』でアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンに颯爽と登場し、アルバム『Oblivion Access』やbedwetter名義での『volume 1: flick your tongue against your teeth and describe the present.』でより実験的な方向に舵を切ったと思いきや、21年リリース現時点での最新アルバム『VOLCANIC BIRD ENEMY AND THE VOICED CONCERN』でインディー・ロックに足を突っ込むという予測不可能性に溢れた掴みどころのない奴、それがLIL UGLY MANEことTravis Miller。その後は基本的には『VOLCANIC~』のロック路線でシングルを細々と発表しており、今回も1月の"ricochet"に続くアコースティック・ギター主体のボーカル曲。"ORANGE OVER"ではトラップ・ビートを使用しているが、"SPILL"になると完全にフォーク。そして、それがまた良いから困るんである。シングルのリリース後にshawn kemp名義での2013年のビート・テープ『beat tape 2013』を公開したが、これももちろん良い。昨年何度か行われたライブの映像を見ると100%ラッパーをやっている。何なんだろう。
ブリストルのプロデューサーMemotoneことWilliam YatesのThe Trilogy Tapesデビューとなる最新作。2023年はMika Vainioが設立したSähköからセルフタイトルのEP『Memotone EP』を、さらにNYCのpatienceからフルレングス『How Was Your Life?』をリリースしているが、年の瀬に最高傑作が登場。カントリー/ブルーグラスを思わせるバンジョーの音色が印象的な"Laughing Grass"、オルガン、ストリングス、木管楽器がアジアっぽいノスタルジックなメロディーを奏でる"Door To The Sky"、突然にYatesが歌いだす"Funny To Stay The Same"などなど、ニューエイジ~アンビエント系ジャズ/フュージョンを基調にしつつ全体にエスノ/フォークロアなムードが漂うジャンルレスな作品。
11月編で紹介したKOUのApolline SchöserとNocola HenryによるユニットNina Harkerが早速新作をドロップ。これまた一貫性のないシュールな実験コラージュ・フォークで如何様にも形容しがたい。“de dos il fuit”における合成音声のグロッソラリア、“(//▽//)”というカワイイ系曲名などの言語的撹乱はもはやこのグループおなじみ。ドラムマシンとチープなシンセが孤高に鳴り響く“Hin Und Her”は80年代始めに作られたカルトSF映画のサウンドトラックのようだ。
LAのジャンルレスな再発レーベル[7th heaven]より、1995~1996年に活動(行ったライブは3回だけ)したサンディエゴのバンドpurlのお蔵入り録音がカセット化。ポスト・ハードコア・バンドJuliaとPapillonの楽器隊からなるインスト・バンドで、本作は元々2019年にBandcamp上でもうひとつのアーカイブ録音『summer』と共に公開されていたもの。サンディエゴのポスト・ハードコアといえばやはりPitchfork~Drive Like Jehu~Hot SnakesというJohn Reisの偉大な軌跡が真っ先に思い浮かぶが、purlの音楽はサンディエゴというよりはDavid Pajo(Slint, Papa M)のAerial MやTortoise, Codeine, Rexのメンバーが結成したインストバンドPullmanを想起させるようなポストロック~スロウコア。つまり僕がとても好きなやつ。当時正式にアルバムを残していたら「知っている人は知っている渋いバンド」くらいにはなっていたのだろうな~とどうでもいい歴史のifを考えてしまいます。
7月編でアルバム『Terre, Poussière』を紹介したベルギーのアーティスト't Geruisの新作。セルフ・リリースではあるが、前作のリリース元であるUKの新興レーベルquiet detailsのスタジオでマスタリングされている。Geruis自身の説明によれば、2022年の傑作『Slow Dance on Moss Beds』の直接の続編であるという。これまで以上に明確なメロディーが刻まれ、1曲1曲にダイレクトなエモーションが込められ、比較的短いランタイム(5分を超える曲は1つもない)でループされている。いま最も信頼のおけるアンビエント作家のひとりです。
8月編で紹介した『This Is How I Win』が年間ベスト入り待ったなしのUK実験ミュージシャンTerritorial Gobbingのデジタル・シングル。"repeater! one, two, three!"というフレーズが繰り返される"REPEATER"は、Joey RamoneのシャウトをサンプリングしたBill Orcuttの名作『A MECHANICAL JOEY』を想起させる、パンク的ミニマリズムの追求。"Listen until satisfied"とキャプションが付け加えられているように、グルーヴィーな2曲目"RETAEPER"のケツと1曲目"REPEATER"の頭が繋がっているのでみんなも好きなだけリピートしよう。
4月編で変則的なリミックス・アルバム『Auditions For Patron Saint ov Cop Suicide』を紹介したRobert Inhuman a.k.a. REALCIDEによるA.C.A.B.(All COPS ARE BASTARDS)を掲げるハードコア・ガバ・パンク・ノイズ・ラップ・プランダーフォニックス・プロジェクトTHX1312の新たなミックステープ。本作が前作にとっての原曲ということになるのだろうか。ベタに1曲目からN.W.A.のクラシック"Fuck The Police"を堂々サンプリング。続く"Problem Solver (natural born copkillaz)"でもドレーとアイス・キューブの"Natural Born Killaz"を引用。一貫したアティテュードに背筋が伸びます。アルバム一周したら次はDicksとMDCとDead KennedysとBlack FlagとSmogとHarry Pussyで元気を出そう!
さて、そのHarry Pussy以前にBill Orcuttがバンド仲間のドラマーTim Koffleyと結成したのがこのWatt。パンク・バンドTrash Monkeysでドラムを叩いていたOrcuttがどうしてもギターを弾きたくてスタートさせたのだという。ユニット名はサンペドロの偉大なパンク・バンドMinutemenのベーシストMike Wattの名から取られている(最高)。本作は2020年に一度Bandcamp上でデジタル・リリースされていたが、今回初のLP化。ジャズ・ファンクのギタリストJames Blood Ulmer, Fred FrithとBill Laswellらによる実験ロック・バンドMassacre, Captain Beefheart, Sonic YouthやMinutemenを始めとするSSTのアンダーグラウンド・パンクからの影響をOrcutt自身が語っている。抽象化されたエクストリームなノイズ・バンドHarry Pussyへと至るギタリストOrcuttの軌跡を示す史料として大変興味深い内容であり、もちろん超かっこいい。80年代後半から90年代のSST, Homestead, Touch and Go, Amphetamine Reptileがなんだか異様に好きでたまらないそこの奇人は今すぐ聴いてくれ!
結成25周年を迎えたミシガンのノイズ大臣Wolf Eyesが、自身のAmerican Tapesで極少数生産していた私家カセット・シリーズ『Droll』をコンパイルしたCDボックスが登場。今回は2001年にリリースされたVol. 1~5を収録している。もちろん脱退前のAaron Dillowayも在籍している時期であり、Wolf Eyesビギナーにもお勧めの内容です。2月に来日するという噂はどうなったのか…。
ブリストルのサウンド・アーティスト兼作曲家Yas Clarkeによるテクスト・スコア作品。4人のパフォーマーがそれぞれに単語あるいは単語にも満たない音節を発し合うことで複雑なリズムとメロディーが調和し循環していく。聴いている感覚としてはBill Orcuttが昨年リリースした傑作『The Anxiety Of Symmetry』に近い催眠的なヴォイス・ミニマルだが、Clarkeはこれを身体的なアンサンブルで構築し、英語の意味を切断・結合しながらリズミカルに操作しているのがすごく面白い。
年の瀬はリリースが少なかったので以上!
さて、ここで2023年ベストソングリストを雑然と発表します。アーティスト名ABC順でMVがあるものはなるべくYouTubeリンクを貼っています。それ以外はBandcampの楽曲ページを。
Aho Ssan - Cold Summer Part I (feat. Blackhaine) Bandcamp
ANOHNI & The Johnsons - Can't YouTube
Anysia Kym & Jadasea - b.f.f.r. YouTube
Arthur Russell - In The Light Of A Miracle Bandcamp
B L A C K I E - i needed you Bandcamp
billy woods & Kenny Segal - Soft Landing YouTube
Black Country, New Road - Across The Pond Friend YouTube
Califone - the habsburg jaw YouTube
Chuquimamani-Condori - Know Bandcamp
claire rousay - Sigh In My Ear Bandcamp
Damien Jurado - The Shame of Two Cities YouTube
Danny Brown - Bass Jam Bandcamp
Dean Johnson - True Love Bandcamp
deem spencer - how far we've come (ft. Eliza Moon & MAVI) Bandcamp
dragonchild - The Source Bandcamp
Gabe 'Nandez - Kujua (ft. Ze Nkoma Mpaga Ni Ngoko) Bandcamp
H31R - Backwards YouTube
Hand Habits - The Gift Of The Human Curse Bandcamp
HIRS - Last King Meets Last Priest ft. Chris #2 and Derek Zanetti Bandcamp
Honour - Pistol Poem (Lead Belly) Bandcamp
Jam City - Do It (feat. Aidan) Bandcamp
Joanne Robertson - Blue Car YouTube
John Francis Flynn - Mole In The Ground YouTube
JPEGMAFIA x Danny Brown - Jack Harlow Combo Meal Bandcamp
Julie Byrne - Death Is The Diamond Bandcamp
k2dj - starty Bandcamp
katie dey - never falter hero girl Bandcamp
Kevin Morby - Five Easy Pieces Revisited Bandcamp
Klein - DJ drop YouTube
Lisa Lerkenfeldt - Limestone Bandcamp
Liv.e - Wild Animals YouTube
Lomelda, More Eaze, Anna McClellan - Lonely Girls, in Omaha Bandcamp
Lost Girls - June 1996 Bandcamp
Lucy Liyou - Fold The Horse (종이접기) Bandcamp
Mad Anthony - Rina Bandcamp
Maria Elena Silva - Love, If It Is So YouTube
Marnie Stern - Plain Speak Bandcamp
mary sue - Something (feat. fxrxzx) Bandcamp
Mick Jenkins - Smoke Break-Dance Feat. JID YouTube
Nourished By Time - The Fields YouTube
Prewn - But I Want More Bandcamp
Proc Fiskal - Pic Of U Bandcamp
Reverend Kristin Michael Hayter - HOW CAN I KEEP FROM SINGING Bandcamp
Sarah Mary Chadwick - Shitty Town YouTube
Silicone Prairie - Mirror on the Wall Bandcamp
Slauson Malone 1 - I Hear A New World Bandcamp
Sparklehorse - Stay Bandcamp
Strange Ranger - She's on Fire YouTube
Tree - I SHOULDVE COULDVE WOULDVE Bandcamp
waterbaby - 911 YouTube
yeule - software update Bandcamp
Yo La Tengo - Aselestine YouTube
Youth Lagoon - Prizefighter YouTube
Zelooperz - Microphone Fiend (ft. Young Coco) Bandcamp
ZZZAHARA - idk how to luv YouTube
曲単位で選ぶと結局ポップ・ソングばかりになるなー。というか、羅列だなー。僕は羅列が好きなんだ。
Spotifyには色々言いたいことありますが、まあ一々リンク開いて1曲ずつ聴くような珍奇な方はいないと思いますので、プレイリストも作りました(ストリーミング配信されている楽曲のみ)。
それでは、全世界6名の本ブログ読者の方は次回ベスト・アルバム編をお楽しみに!
追伸:上記リストにも選んだStrange Ranger、昨年解散しました!7月編であんなに語ったのに!残念!それから、かつて来日公演を観に行ったオーストラリアのCamp Copeも昨年解散!何度聴いても心震える最高のriot grrrlアンセム"The Opener"を絶対に聴いてくれ!
聴いたよな?では、ごきげんよう。