NEW MUSIC TROLL - AUG

こんにちは!ただただ気に入った音楽を紹介するNEW MUSIC TROLL、8月編です。

Alta Vista - Alta Vista
シカゴで活動するミュージシャン3名によるユニット。ある日、ベーシストのJakob Heinemennが道端のがらくた箱の中に『New and Original Favorite Songs of Famous Hill Billies: Songs of Heart and Home, Romance, Pathos, and Comedy』という、1930年代に作られたカントリーや偽のトラディショナル・ソングが載った本を見つける。Heinemennはそれらの楽曲を現代に蘇らせるべく、仲間のChet Zenor(Gt.)、Andy Danstrom(Dr.)を誘ってAlta Vistaを結成。ポストロック~モダン・ジャズを横断するシカゴらしい感性で再演された"Melted Country Music"が強力なニセ・ノスタルジーを呼び起こす。Adeline HotelことDan Knishkowyが主催するNYのインディ・フォーク・レーベルRuination Record Co.より。


Arnold Dreyblatt, The Orchestra of Excited Strings  - Resolve
Pauline Oliveros, Alvin Lucier, La Monte Youngに師事したミニマル重鎮Arnold DreyblattがDrag Cityからリリースした最新作。バックを務めるThe Orchestra of Excited StringsにはOren Ambarchi, 17年にPANからリリースした『Stack Music』が忘れがたいKonrad Sprenger, かねてからDreyblattやSprengerと共演するJoachim Schütz。Sprengerによる反復ビートが引っ張るロックなギター・ミニマル曲も良いが、金属的なドローンの連続の後にDreyblattのピアノ線を張ったダブル・ベースのパーカッシブなタップ音が現れ、さらにGlenn Branca的な倍音ギターが絡んでくる17分に及ぶクローサー"Auditoria"が素晴らしい。70年代NYCアヴァンギャルドの歴史を今もって感じられる傑作でありました。Dreyblattといえば、Ambarchiが主催するBlack TruffleからTony Conrad, Jim O'Rourkeとの共演ライブ盤『Tonic 19​-​01​-​2001』が出たのも記憶に新しい。


The Armed - Perfect Saviors
デトロイトのパンク・コレクティブThe Armedの最新5th。2009年の結成以来、音楽をエゴやアイデンティティから解放するべくメンバーの名前を公表せず戦略的に匿名性を維持したまま(ときに偽名まで用いながら)リスナーを撹乱し続けてきたこの謎めいた集団は、前作『ULTLAPOP』リリース時から徐々にその肉体性を曝すようになっていたが(メンバーにはボディビルダーがいた!)、18年の大傑作『ONLY LOVE』に始まる三部作のラストに位置付けられた今作でついに"バンド"として姿を現した。とはいえ、ディッド・ボウイの遺作『★』への参加で名を馳せたジャズ・ドラマーMark Gulliana, 90s ポスト・ハードコアChavezのギタリストでBonnie "Prince" Billyとの共作も多いMatt Sweeney, Sarah Tudzin(Illuminati Hotties), Julien Baker(Boygenius)など、今回もかなり多くのミュージシャンが(しっかり記名制で)参加している。そのBakerがボーカル参加した"Sport of Form"のMVにはパンク・ゴッドことイギー・ポップ御大が神として登場していて最高だ。音楽的には、彼らがこれまで鳴らしてきたクロスオーバー・パンクを対象化するような新たな試みに満ちている。ボーカリストTony Wolskiの歌声で始まるオープナー"Sport of Measure"はこれまでの神秘性を取り払った人間宣言のようだ。Wolskiによれば今作は"アリーナ・ロック・レコード"なのだというが、"Patient Mind"などはまさにそのコンセプトを負った拳振り上げシンガロング系ロック・チューン。キャッチーなダンスパンク"Liar 2"や、アコースティック・バラード"In Heaven"(現正式メンバーPatrick Shiroishiのサックス・ソロが炸裂!)、ピアノの美しい音色で展開するジャズ・フュージョン"Public Grieving"といったポストULTRAPOPともいうべき変則的な楽曲群は"らしさ"とは何かをONLY LOVE主義者の私へ問いかける。Wolskiはインタビューで「難読化はもう行くところまで行ってしまった 今は本当に正直でありたい」と語っていた。これがコンセプチュアル・アートの限界なのか、望まれるべき真摯な表現の態度なのか…少なくとも武装集団The Armedは新たなフェーズを迎えている。


Babe, Terror - Teghnojoyg
ブラジル、サンパウロのマルチメディア・アーティストClaudio Katz Szynkierによるプロジェクト。Bandcampページにある長いライナーノーツや、アンビエント・ミュージック専門の得難い批評ブログA Closer Listenに掲載されているインタビューを読むと、ブラジルという国の状況(軍事独裁の歴史、ボルソナロのネオリベ右派政策、ルーラの再選・左派政権への回帰、70万人近くが死亡したパンデミック)に根差したハイコンテクストな作品であることがわかるが、まず曲を聴くだけでもそのユニークさに耳を惹かれる。ここではシンセやサンプルによる複数の異質な音のレイヤーが調和を拒絶したまま進行しており、別々の音楽を同時に再生しているような、非常にストレスフルな混乱をもたらす。サンパウロ郊外の住宅で行われたハウスパーティーでのDJプレイなどがサンプリングされているのだという。「もし私の音楽がサウンドトラックであるならば、今日の黙示録的状況(新型コロナウイルス、超資本主義、ネオファシスト、etc)のサウンドトラックというだけでなく、その直前の瞬間を含む記憶のサウンドトラック」であり、「壊れた世界と可能/不可能な世界との対話の瞬間」である黙示録状況によって本作を作ることができた、とSzynkierは語る。この相克が、不調和なコラージュ感覚に表れているのだろうか。Bandcampでアルバムを購入すると、35分のボーナスEPとそれぞれの曲に関連付けて制作された映像が特典でダウンロードできるのでそちらをおすすめします。


Babytooth - Babytooth
ポートランドの4人組の1stフル。WednesdayやPalehound等を彷彿とさせるフォーク風味のスラッカー系インディ・ロックで好み。リード・ギターのAnnie FiferがボーカルをやっているYellow Roomってバンドの方はスロウコアっぽいテイストもあり、そっちもそっちで良い。


BBBBBBB - POSITIVE VIOLENCE
愛知県岡崎市拠点の3人組デジタル・ハードコア・バンドの2ndがLAのエクストリーム・レーベルDeathbomb Arcから。Deathbombが日本人アーティストと契約するのはDos Monos以来だという。恥ずかしながらこのバンドのこと何も知らなくて、Deathbombの新作っていうんで聴いたんだが、かっこいいです。グラインド・ノイズコアにNyege Nyege的なガバやシンゲリも混ぜ込みつつ、"OH SAWAGI"でのお祭りビートみたいなジョークもあり。"FIRE ~Wish You Were Here(long ver.)"におけるチョモランマ・トマト "through your reality"のサンプル使いとか普通にエモい。チョモランマ・トマトは再評価されるべき。そこの30代前半の元邦ROCKキッズだった君もそう思わないか?



Bengal Chemicals - ন​ি​য​়​ম
6月編でインドは西ベンガルのノイズ・シーンをけん引するBiswa Bangla Noiseのコンピを取り上げた際にも紹介した、コルカタのエクスペリメンタル・ユニットBengal Chemicals。8月は本作以外にも『ম​ফ​স​্​ব​ল ট​ে​প​: ১』、そして『ম​ফ​স​্​ব​ল ট​ে​প​: ২』と計3作品を一挙セルフ・リリースしていたが、Google翻訳によれば"レニングラード: 第1章"および"第2章"と名付けられた2つの長尺トラックを含む"適度"と名付けられた本作がベスト。1章の後半から現れるスローなインダストリアル・ビートが、2章でテンポを不規則に変化させながら持続する。初期Wolf Eyes好きのそこの君にもおすすめだ。


Bisk & Spectacular Diagnostics - DIORETIX
ロンドンのラッパーBiskとシカゴのプロデューサーSpectacular Diagnosticsのジョイント作。BiskのBandcampページを眺めてみると、なるほど先月紹介したImmi Larusso, Morriarchi, Dylantheinfamousといったメンツと関わりが深いようで、僕の琴線に触れるのも納得。DiagnosticsのLo-fiビートとBiskの低熱かつエッジーなフロウの相性が大変グッドです。


Bonnie "Prince" Billy - Keeping Secrets Will Destroy You
Matt Sweeneyとの『Superwolves』、Bill Callhanとの『Blind Date Party』と近年も多作ぶりを発揮しているWill Oldhamだが、Bonnie "Prince" Billy単独名義としては19年の『I Made a Place』以来4年ぶりの新作である。本作も彼らしいシンプルかつアナクロなSSWアルバムであり、“Like It or Not”、"Bananas"、“Kentucky Is Water”といった楽曲で語られる人生に対する洞察や愛情に満ち足りたリリック≒ポエトリー、“Rise and Rule (She Was Born in Honolulu)”のストーリーテリングは、言うまでもなく素晴らしい。ケリー・ライカート『オールド・ジョイ』でのOldhamの素晴らしい演技まで観返したくなってくる。

Cameron Graham - Becoming a Beach Angel
UKのドラマー/プロデューサーCameron GrahamがPhantom Limbsからリリースしたデビュー・アルバム。ドラム・トリガーを用いて、人力で叩いたリズムを電気信号→シンセ音に変換、跳ねるようなリズムが複雑なパターンで連なってカラフルなメロディーラインを紡ぎ出す。聴いて楽しいミニマル・ミュージック。ゲーム音楽を聴いているような感覚にも近い。


CHERUBS - Icing/Heroin Man
テキサス州オースティンのノイズロック・バンドCherubsの92年デビュー作『Icing』&解散後の94年にリリースされた2ndにして最高傑作『Heroin Man』(加えて再結成後2015年の『2 YNFYNYTY』も)が、ついにリマスター再発!当時のリリース元はButthole SurfersのKing Coffeyが設立したTrance Syndicate Records(僕の愛するスロウコア・レジェンドBedheadもここからアルバムを出している!)。浴槽に浮かぶ死体ジャケットが本当に素晴らしい『Heroin Man』は、これまたLate 80s~90sのジャンク・ロックを語るには避けて通れない 変態レーベルAmphetamine Reptileが2010年代に再発リプレスしていたものの、それも軒並み高額化していたので大変嬉しい。一方『Icing』のほうはオリジナル盤のカバーアートがコンプラ的にアウトなので今回の再発では変更されてしまっている。去年、そのオリジを御茶ノ水ディスクユニオンで見つけて買うか買わないか小一時間悩んで買わなかったことが未だに心のどこかに引っ掛かっているため、こちらの再発LPは買わなかった…。ともあれ、この時代のこういう音が僕は大好きなのである。みんなもCherubsやCowsを聴いてバカになろう!


claire rousay - Sigh In My Ear/Your First Armadillo
インディーレーベルSaddle Creekの“Document Series”としてリリースされた7インチシングル。A面“Sigh In My Ear”では、Mexican Summerのシングル・シリーズ“Looking Glass”として発表された楽曲“Deceiver”に続いてカナダのシンガーソングライターHelena Delandをボーカルにフィーチャー。オートチューン加工ボーカルのハーモニーが美しい、ほとんどスロウコアな名曲であった。Rousayは7月にX(旧Twitter)で、なんと「スロウコア・アルバムのレコーディングを終えた」とポスト(ツイート)しており、そのリリースが待ち遠しい。


DJs Di Guetto - DJs Di Guetto
先鋭ダンス・レーベルPrincipeより、地元リスボンの特異なダンス・ミュージック・シーンを方向づけた2006年の画期的なコンピレーション『Vol. 1』から13曲を抜粋した新たな2LPのコンピが登場。2011年に設立され、バティーダやクドゥーロといった植民地アンゴラ由来の独自のダンス・ミュージックを世界に広めたPrincipe、そしてその源流となったDJコレクティブDJs Di Guetto等については、Resident Advisorで2014年に公開された記事「リスボンのゲットー・サウンド」に詳しいので改めて参照されたい。レーベル設立10年に合わせた2020年のPitchfork記事"A Guide to Portugal’s Príncipe Discos, One of the Most Exciting Dance Labels on Earth"は、Principeが拡散してきた音のインパクトを知るには丁度いいだろう。私のような"文脈"好きからすると、今回の再リリースは非常に教化的で意義深いものだったが、とはいえこういう音楽は聴けば一発でヤられるんだから聴けばいいのである。


Dustin Wong - Perpetual Morphosis
00年代後半のUSインディ界に颯爽と現れ、そして消滅したボルチモアのエキセントリック・オルタナ・バンドPonytailをご存じか?意味不明の痙攣ボーカル、マス・ロックとサーフ・ロックを往来するツインギター。僕は今でもPonytailが大好きなのだ(このライブビデオを何度観たことだろう)。そのPonytailでギターを弾いていたのが、ハワイ生まれ日本育ち(彼の第一言語は日本語である)のアーティストDustin Wongである。バンド解散後はギターループを主体としたソロ作品や嶺川貴子とのコンビ作を発表しているが、本作は2018年の『Fluid World Building 101 With Shaman Bambu』に引き続いてシカゴの実験レーベルHausu Mountainからリリースされた最新作。基本的にはシンセやサンプル、そしてボーカルを取り入れて見事にHausu Mountainらしく複雑にデザインされていた前作の延長と言えるが、本作ではそこにThrill Jocky時代のライブ感とアンビエント的感覚が追加されているように思う。"Pegasi"や"Orihime Hikoboshi"を聴いていると、ライブハウスの最前列でループペダルを自在に操るWongの一挙手一投足に釘付けになっていた10年前がまざまざと思い出される。ちなみに今年2月にはPatrick Shiroishiとの共作『森の穴』が、本作の翌週にはLeavingからLAの電子音楽家Brinとの共作『Texture II』が発表されているので、そちらも要チェク。


Earl Sweatshirt & The Alchemist - Voir Dire
2019年にアルケミストがその存在をほのめかし、YouTube上に偽の名義でアップロードしていたとされながら、誰もそれを見つけることができなかったEarl Sweartshirtのジョイント・アルバムが突如ドロップ。存在するがアクセスできないという都市伝説的なアルバムの在り様も異様であったが、Gala Musicのサイト上でのみ無料ストリーミングとNFTとしての購入が可能、というリリース方法もまた特殊(近日中にSpotify等でも配信されるという)。リリースに至るまでの尋常ではないプロセスと比べると、紛れもないALC印のドラムレスなビートと紛れもないEarl印のフロウは何らサプライズもなくフィットしている。もちろんリピート&リピート。


Edsel Axle - Variable Happiness
フィラデルフィアのシンガーソングライターRosali Middlemanの新プロジェクト。21年にリリースされたRosali名義の歌ものアルバム『No Medium』からすると意外に感じられるが、本作はエレキギターによるソロの即興インスト。これが大変素晴らしい。Loren Connors~Bill OrcuttのメランコリーとCrazy HorseやSteve Gunnの土臭さ。SSW作と同年に同じくギターインストの『Chokeweed』もリリースしていたようなので、そちらも改めて聴き直さなければならない。


Elvin Brandhi & Lord Spikeheart - Drunk in Love
先月のZiur『Eyeroll』の項でも紹介したウェールズ出身ベルリン拠点のボーカリスト/詩人/アーティストElvin Brandhiと、ウガンダのNyege Nyege Tapesからデビューしたケニアのノイズ/メタル・デュオDumaの片割れLord Spikeheartのジョイント作がNyege NyegeのサブレーベルHakuna Kulalaより登場。Brandhiはかつて同レーベルからVillaelvin名義でNyege Nyegeコレクティヴとのコラボレーション作『Headroof』をリリースしており、Spikeheartとも2019年から共同作業を続けていたという。インダストリアル・ビートとノイズ、そして両者の凄まじいボーカル・パフォーマンスに圧倒される極アナーキーな傑作であった。


Florry - The Holey Bible
女性シンガーソングライターFrancie Medoschが率いるフィラデルフィアのインディーロック・バンドFlorryの2nd。Big Thiefの直近作『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』や、WednesdayのギタリストMJ Lendermanのソロ作に連なるようなカントリー/ルーツ色の強い、田舎臭いホンキートンクなグッド・フィーリング。MedoschはWilcoの『Yankee Hotel Foxtrot』やGillian Welchを聴いて育ったという、根っからのオルタナ・カントリー者なのだった。Lendermanも所属したDear Life Recordsからのリリース(Lendermanは先ごろAnti-とサインして素晴らしいシングルを出している)。


Forces - Chim​æ​ras
フィンランド人アーティストJoonas Sirenによるプロジェクト。プログラミング言語を用いて自由度の高いシンセを作成できるオープンソースのソフトウェアSuperColliderや様々なモジュラーを使い、ストックホルムにある公営スタジオEMSでの作業から生まれた実験作品。Kali MaloneEllen ArkbroといったXKatedral周辺のスウェーデンの電子音楽家はもちろん、イタリアのCaterina BarbieriなんかもEMSのユーザーのようだが、なにせ1964年に設立された歴史ある施設なのだ(2014年にはEMSの研究本も発刊されている)。Arkbroが語るには、一度コース料金を払えば、その後は生涯支払い無しでスタジオを予約できるようになるらしい。そして彼女たちもまたSuperColliderのヘビーユーザーであり、ストックホルムのシーンでは様々なソースコードがオープンに共有されているのだという。開放された場とソフトウェアと情報があり、共有され、豊かな作品が生まれる。流石ヨーロッパだなー。『Chim​æ​ras』の話からは逸れたが、音楽以外の話をするのオレの本分!


Francisco Meirino & Jérôme Noetinger - Drainage, in six part
スイスのFrancisco MeirinoとフランスのJérôme Noetinger、実験音楽家2名による昨年の『Maiandros』に続く共演作。モジュラー・シンセ、フィールド・レコーディング、マイクロフォン、そしてオープンリール・デッキ、ラジオ、CDプレイヤーといったデバイスを用いた、電子機器の意図的なグリッチ・ノイズとフィジカルの操作が織りなすミュージック・コンクレート・セッション。


Grain - We'll Hide Away Complete Recordings 1993​-​1995
オハイオ州クリーヴランドでわずかな期間活動したポスト・ハードコア・バンドGrainのコンプリート・ディスコグラフィ。100に近いライブ・ステージをこなすなど精力的に活動しながら、作品として残ったのは数枚の7インチとスプリットやコンピレーションへの参加のみで、フルレングスは一枚も残さなかった。D.C.ハードコアの影響が色濃い、いかにもearly 90sなハードコア・サウンド。fast/slow, loud/quietのコントラスト、不協和音のギターワーク、ボーカルのシャウティング…やっぱりこの時代のこの音!UnwoundIndian SummerHooverDrive Like Jehu(R.I.P. Rick Froberg)など同時期の偉大なバンドを共に振り返りつつ、ノスタルジーに浸ろうと思います。


Hali Palombo - Radio & My Voice
シカゴのサウンド・アーティストHali Palomboの最新作。彼女のスタイルは、過去の録音物、短波ラジオ、あるいはモールス信号などを基にしたサンプル・ベースのプランダーフォニックと呼ばれるジャンルに属する。レコードと競合した末に廃れてしまった初期の録音物であるワックスシリンダーの音源をサンプリングした21年の『Cylinder Loops』で知って以来フォローしている作家である。タイトルのとおり、本作のサンプル・ソースは彼女が傍受した短波ラジオ。同様に短波ラジオを使った20年の『Cheery Ripe』の続編的な内容で、今回は不明瞭な音楽、あるいは人の話し声、ノイズに加えて、ピアノ、ギター、サックスといった楽器の音も加えられているという。全体にダーク・アンビエント的雰囲気に包まれているが、オルガンによる子守唄のような簡素な音楽と生成された“I Love You”という声、そしてしばらくの沈黙のあとにNicoの名曲"These Days"の謎インストverが霞んで聴こえてくるアルバム最後の“Firedrake Jammer”がすげえ感動的。


Helvetia - The Beach At The Edge Of The World
スロウコアのカルト・バンドDusterのオリジナル・ドラマーであり、解散後にはXiu Xiuのデビュー作『Knife Play』にギターで参加したり、Built To Spillのベーシストを務めていた時期もあるマルチ・インストゥルメンタリストJason Albertiniのプロジェクト。2005年に今はなきUp Records(Built To Spill. Modes Mouse, 764 Heroes, Quasi)からリリースされたデビュー作『The Clever North Wind』以来、主に4トラックで録音されるAlbertiniのソングライディングはローファイ美学にとことん貫かれており、Dusterのオリジナル・メンバーであるCanaan AmberClay Parton以上に、実は誰よりも彼がDusterの遺伝子を継いでいたのだった(とはいえ、HelvetiaにはときにAmberも参加していたし、さらにはPartonが立ち上げたThe Static Cult Labelからリリースを重ねていたので、活動休止中も彼らの共同作業は実質続いていたと言えるだろう)。しかし、本作のリリース・ページには何と“Last Helvetia album!”とキャプションが加えられているのだ。20代後半からメンタルヘルスと薬物中毒に苦しみながらもひたすら自らの音楽を作り続けてきたAlbertiniの今後が単純に心配になるわけだが、とりあえず今はこのラスト・アルバムを聴いてHelvetia万歳と叫びたい。Misfitsの世紀の名曲"Hybrid Moments"のローファイ&サッドなカバーが収録されている『Gladness 2001​-​2006』のカバーアートに使われているAlbertiniのポートレートがをプリントした限定5枚のTシャツのうち1枚を買ったのは私です。


Ibukun Sunday - Divine
1月編でもPhantom Limbからのリリース作『Mantra』を取り上げたナイジェリアのアンビエント作家Ibukun Sundayがセルフ・リリースした新作。ドローン要素の強かった前作に対して、今作では室内楽やニューエイジに接近(彼はヴァイオリニストでもある)。ぜひこの路線でもっと長尺のワントラックが聴きたい。


Iceboy Violet - Not a Dream But a Controlled Explosion
マンチェスターのノンバイナリー・ラッパー/プロデューサーIceboy Violetの最新プロジェクト。昨年のEP『The Vanity Project』はSlikback, Mun Sing(Giant Swan), Blackhaineら気鋭アーティストとのコラボレーションがメインだったが、今回は全曲セルフ・プロデュース。徹底してダークなビートはアンビエント~グライムを横断しながら強烈な低音を響かせ、Violetのフロウと一体化する。「生活の中で欲望とファンタジーが果たす役割について」とされるリリックは、自身のアイデンティティを反映しながら、詩的に力強く希望を提示している。
"Ditch your mans. And come and find me in our own personal Eden.", "Force of will change the plot." - ("Paris, Bradford")
凄みを感じさせる全8曲17分。


Mad Anthony - The Lost Tapes
1975年、無名の3人組Mad Anthonyによってカリフォルニア州サンタ・バーバラのとある納屋の中で、2トラックのレコーダーと一本のマイクで録音されたデモ音源集。バンドのメンバーJohn Schwabの息子Benjamin Schwabは、Michael Collins(f.k.a. Run DMT, Salvia Plath)によるサイケデリック・ポップ/AORプロジェクトDrugdealerへの参加や、アナクロすぎるソフト・ロック・バンドSylvieの一員として活躍するミュージシャンであり、彼がこのリリースに尽力したそうだ。Benは幼少気に父親の音楽を聴いて以来、そこから多くのインスピレーションを受け、Sylvieとしての活動の大きなきっかけにもなっているのだという。スイートなギターワーク、ボーカル3人の美しいメロディーとハーモニー、そしてローファイな録音…たしかにこれは素晴らしい。当時、バンドは結局レコード会社と契約することはできなかったが、50年の時を経て、今僕がこうして聴いている。


Maeda Yasuyuki / Li Song - 28th Dec, Arakawa
水道橋にある即興音楽専門のCDショップ兼レーベルFtarri(ふたり)より。ロンドン在住のPCプログラマー/ミュージシャンLi Singと名古屋在住のPCプログラマー/ミュージシャン前田康行の2名によるサウンド・アート作品。2022年12月28日、荒川近くの屋外で2台のラップトップを用いて行われたSuperColiderによる即興セッションの記録。それぞれのラップトップの間に置かれたポータブル・レコーダーが、PCの内臓スピーカーから出される電子音と周囲の環境音をつぶさに捉える。フランスの現代音楽家リュック・フェラーリの代表的コンクレート作品『Presque Rien (ほとんど何もない)』を彷彿とさせる日常の音風景(車の走行音、鳥のさえずり、通行人の歩行と会話、etc)と、そこへ控えめに闖入するアンビエントな電子音が生み出す調和と緊張の不安定な関係がすごく面白い。キャプションにも書かれているように、公園で録音された"5pm"の20分15秒当たり、ブリープ音が持続している中で、誰かの「とめて」という声が聞こえるのだが、音風景としてのその声が人為的なノイズに対してのノイズに反転して、むしろ静寂が壊されたように感じられる。ちなみに現場で演奏していた2名は、その声を聞いた記憶はないらしい…(急にホラー)。2名が同じコンセプトでロンドンで制作した『Two Laptops』もあるよ。


Matt Atkins - A Quiet Ritual
7月編で『Circulation of Subtleties』を紹介したロンドンのサウンド・アーティストMatt Atkinsの新作が、同じく7月編で紹介したChemiefasewerk(a.k.a. Christian Schiefner)& Tim Olive『Der Hafen』のリリース元であるエディンバラの新興レーベルMolt Fluidからリリース。テープ・ループと物音パーカッションによる静謐なコンクレート。親レーベルczaszka (rec.)と合わせて、今後もMolt Fluidには要注目です!


Mick Jenkins - The Patience
シカゴのラッパーMick Jenkins、2年ぶりの新作。30分にも満たない作品だが、トラックのジャジーな雰囲気はそのままに、Jenkinsのパフォーマンスはこれまでになくエネルギッシュで過激。「忍耐」というアルバム・タイトルは、作品を出すごとに予算が減っていったという前所属レーベルCinematicとの契約を前作『Elephant In The Room』で終えてからの2年間に積み重なったフラストレーションもまた表しているようだ。Freddie Gibbs, Benny The Butcher, JIDらをフィーチャーした前半から、非常にアグレッシブなフロウとリリックを聴かせるハイライト満載の後半部へボルテージを上げていく構成が熱い。最高傑作間違いなし。


Mr. Greg And Cass Mccombs - Mr. Greg And Cass Mccombs Sing And Play New Folk Songs For Children
僕が最も敬愛するシンガーソングライターのひとりであるCass McCombsの新作はちょっとトリッキー。長年の友人である幼稚園教諭Greg Gardnerさんが子供たちに向けて書き貯めていた楽曲を、McCombsが様々なアレンジで仕上げた全20曲の童謡集となっている。実際に子供たちもインタビューを受けたりコーラスを歌ったりといった形で参加しており、オーソドックスなフォーク/カントリーを基調としたアレンジも相まって、まあ非常に朗らかである。60年代から活動する現役フォーク歌手Michael Hurleyがカメオ出演する“Friends From All Around The World”なんて、たしかに保育園のときにこんな歌ったような気がするものな。職業や身体、動物、紙飛行機、アルファベットなど、いかにも幼児教育っぽい楽しげなトピックを多く扱っているが、“Requiem For Ruth Bader Ginsburg”や “Wave A Flag For Harvey Milk”では、米国の歴史に名を残す偉大な女性最高裁判事と同性愛者の権利のために立ち上がった市議会議員を讃えながら、公正・平等・多様性の大切さを説いている。その射程は子供たちだけにはとどまらないだろう。


Myst Milano - Beyond The Uncanny Valley
トロントのラッパー/プロデューサーMyst Milano、ポラリス・ミュージック・プライズにノミネートされたデビュー作『Shapeshyfter』に続く2nd。ブラックでありノンバイナリーであるMilanoのモットーは"'No genre, no gender, no rules"。本作は、ハウス、ドラムンベース、フットワークといったダンス・ミュージックにヒップホップ、R&Bを混ぜ込んだ「世代、地域、ジャンルを超えたブラック・エレクトロニック・ミュージックのアンソロジー」として制作された。陶酔感のあるトラックに乗せられる抑制的なMilanoのボーカルが、"Pressure"でパンキッシュに弾ける勝利の瞬間は間違いなく本作におけるハイライトだろう。


Neil Young - Chrome Dreams
17年の『Hitchhiker』、20年の『Homegrown』に続く、70年代半ばに録音された未発表アルバム・シリーズの最新作。当時制作されたアセテート盤を元にしたブートCDが古くから出回っており、ヤング自身『Chrome Dream 2』なる続編作を2007年に発表していたりする幻のアルバムがついに公式リリースされた。収録されている楽曲は、後に再録されたり、前述のアーカイブ・シリーズに含まれていたりとすでに世に出されているものも多いが、本作は70年代のヤングの充実度を明確に示している。ニール・ヤングは良いぞ。ちなみに僕が一番好きなアルバムは74年の『渚にて』です。


Open Mike Eagle - Another Triumph Of Ghetto Engineering
シカゴのアンダーグラウンド・ラッパーOpen Mike Eagleが昨年の『Component System with the Auto Reverse』から一年経たずにリリースした最新プロジェクト。プロデューサー陣は前作に続いてQuelle Chris, Illingsworth, Child Actor, そしてBilly Woodsとの『Maps』が記憶に新しいKenny Segalと磐石の布陣。プレスリリースによれば、本作は「我々を無視する人間への“fuck you”、我々の生死を気にかけてくれる人たちへの“thank you”」なのだという。喪失のアルバムであった2020年の『Anime, Trauma and Divorce』、そして故MF DOOMへの素晴らしいトリビュート“for DOOM”をハイライトに据えたノスタルジーと内省の前作を経た本作は、(いつものように)ユーモアに溢れた個人史であり、現在のアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンへの賛歌である。仲間たちの名前をひたすら列挙し讃える“dave said these are the liner notes”はまさに“Another Triumph”の宣言だろう。


ovrkast. - RESET!
MaviEarl Sweatshirtへのビート提供、さらにはティーン・ラッパーredveil『Learn 2 Swim』での客演など、数は少なくともアンダーグランド・シーンに確かな軌跡を残してきたオークランドのラッパー/プロデューサーovrkast.、3年ぶり新作は6曲入りのEP。前作『Try Again』での彼のラップはときにビートにかき消されまでしていたが、今作では人が変わったように軽やか且つエモーショナルなフロウを自信ありげに披露していて素晴らしい。


Plume Girl - In the End We Begin
オースティンのオルタナティブ・ポップ・デュオFelt Outの片割れSowmya Somanathによるソロ・プロジェクトPlume Girlのデビュー作が、おなじみスロバキアのレーベルmappaより。インドのラーガからインスピレーションを得た、アコースティックとエレクトロニクスを織り交ぜたアンビエント・ポップでかなり良い。Auto-Tuneボーカルや、"emo ambient"のタグからわかるように、Claire Rousay, More Eazeからの影響も大きそう。


pmxper - pmxper
Trilogy TapesやAD93から作品をリリースしているDJ/プロデューサーPavel Milyakov (aka Buttechno)とアンビエント作家Perira、ベルリン在住のロシア人アーティスト2名によるコラボレーション作が、ノルウェーのレーベルSmalltown Supersoundのジャズ・ラインLe Jazz Nonより。スポークンワードとアンビエント、そしてYoung Marble Giantsのミニマリズムをベースにしつつ、トラックによってはシューゲイズっぽいギターやサックス、太いベースによるジャーマン・ロック的グルーヴもアクセントとして加えられている。


Prewn - Through The Window
マサチューセッツのシンガーソングライターPrewnことIzzy Hagerupのソロ・デビュー作。彼女はNYCの即興ジャム集団Pelican Movementの一員としても活動しており、同グループの首謀者Kevin McMahon(僕の愛するニュージャージーのパンクバンドTitus Andronicusの作品を数多く手掛けている!)が共同プロデュースと録音を務めている。フリーフォーク~サイケ/ガレージ(あるいはスロウコア)の間をうろつきながら、Hagerupがその特徴的なボーカルで歌うのは、人生の暗がりだ。"Tell my momma that I love her. See you dad above the thunder. Let this be a lesson children. Nothing lasts forever."と、自動車事故および死を仄めかす陰惨なオープナー"Machine"から、気分は一向に晴れることはない。"Perfect World"では、金持ちの権力者を語り手にグロテスクな世界観を歌っている。叙情にとどまらないダークなストーリーテラーとしてもハイセンスだ。


Prison - Upstate
NYCのサイケデリック・バンドEndless BoogieのギタリストPaul Majorを中心に、80sハードコア・バンドGoverment Issue, Dischordのポスト・ハードコア・レジェンドRites Of Spring, David Berman率いるSilver Jewsなど数々のバンドで演奏してきたベーシストMike Fellows、オリンピアのカルトなポスト・ハードコア・バンドLycn(K Recordsからの唯一作『These Are Not Fall Colors』が間もなく再発予定)のフロントマンであった故Sam Jayneら、輝かしいメンツによるヘヴィ・サイケ・スーパーグループPrisonのデビュー・アルバムがDrag Cityから。15~20分に及ぶブルース/ガレージ/サイケデリックな即興フリーク・アウト・ジャムをたっぷり収録。


Raw Poetic & Damu The Fudgemunk - Away Back In
Archie Sheppの甥っ子であるラッパーRaw PoeticことJason MooreとDamu The Fudgemunkのジョイント作。Fudgemunkの間違いないドラム・プログラミングに加えて、このデュオの前作『Laminated Skies』(昨年のベスト・ラップ・アルバムかもしれない)に続いて参加しているPatrick Fritzのスムースなギターリフがトラックの中心に据えられ、Mooreの半ば歌うようなライミングを彩っている。


Ruth Garbus - Alive People
Tune-YardsことMerrill Garbusの妹であり、King TuffことKyle ThomasとのバンドFeathers, Happy Birthdayでも活動していたシンガーRuth Garbusの新作は、ギター、シンセ、ドラムマシンというシンプルな構成によるライブ録音のモダン・フォーク。往年のジョニ・ミッチェルやリンダ・パーハクスを想起させるGarbusの歌声はトラディショナルに響くが、同時に今年3月にリリースされたRichard Youngsの『Modern Sorrow』にも通じるアヴァン・ポップな感覚もあり。繰り返し聴きたくなる傑作です。


Slikback - I S O L A T I O N
K E S S E K I』『T A P E S T R Y』『H I K A R I』と今年もハイペースにリリースを続けているケニアのDJ/プロデューサーSilkbackの5曲入最新EP。ダブステップもフットワークもインダストリアル・テクノも何でもござれな"KENEKI", "VOIDOUT", "ASEIX"のつるべ打ち最高。SFホラー映画のサントラみたいなラスト曲"TRAIL"も◎。Silkbackの楽曲は大体Bandcampでフリーでダウンロードできるのでみんなもそうしよう!


Sonic Youth - Live In Brooklyn 2011
ソニック・ユースの解散前最後のアメリカ公演の模様を収めたライブ盤。1曲目はSetlist.fmによれば80年代後半から一度もライブで演奏されていない"Brave Men Run (In My Family)"。この日のバンドはもうかます気満々なのである。続いて定番曲"Death Valley ’69"→"Kotton Krown"(『Sister』(1987)収録)→"Kill Yr Idols"(『Confusion Is Sex』(1983)収録)→"Eric's Trip"(『Daydream Nation』(1988)収録)と、80年代USアンダーグラウンドの輝かしい功績であるインディーズ期の楽曲が連続する。結局、この日のセットリストで最も多かったのは、20ウン年ぶりに演奏されたものも含めた『Bad Moon Rising』(1985)収録曲であった。バンドのパフォーマンスはエネルギッシュで、過去の楽曲と当時の最新作『The Eternal』の楽曲とを並べてもまるでタイムラグを感じさせない。バンドが破綻する直前の最後のスーパーノヴァを記録した貴重な文化遺産です。


Territorial Gobbing - This Is How I Win
英リーズのアングラ・コンクレート作家Territorial GobbingことTheo Gowansによるテープ・ループ作品。6月に自主リリースされていた26分に及ぶタイトル曲と、同楽曲を生楽器(バイオリン、オルガン、チェロ)を加えた編成で演奏したライブ音源をそれぞれA面とB面に収録した形で、ブリストルのDIYレーベルLiquid Libraryがカセットとして再リリース。繰り返される同一の悲しげな旋律を軸にフィールド・レコーディングやノイズが様々なテクスチャーを加えていく。


Theravada and Zoomo - Waste Management
Akai SoloYUNGMORPHEUS, Earl Sweatshirtにもビートを提供しているNYCの才人Theravadaが今回はMCに専念し、ラッパーYLと黄金コンビを組むビートメーカーZoomoとのジョイント・アルバムを発表。91曲入りのアルバムを発表するなどラッパーとしても十分すぎる実績を残すTheravadaの硬派なライミングとZoomoによるサンプリング・ベースのアブストラクトなプロダクションの相性は抜群。


Tomu DJ - Crazy Trip
1月編で『If You're So Cool, How Come No One Likes You?』(改題『Temporary Suspension』)を紹介したTomu DJの新作。僕はどういうわけか『Ambient works vol. 1』でアンビエント作家として彼女を認識し始めたわけだが、本作はしっかりクラブ向きのIDM作品であった。ゆらゆらするアンビエント・ドローンとハウスの4つ打ちを組み合わせた"Mewsic"、Petty Gettyのユーモラスなボーカルをフィーチャーしたジューク・トラック"Bedroom DJ"(素晴らしい語順だ)、ニューエイジなシンセのバックでホワイトノイズがうっすら刻むレゲトンのリズムをパーカッションが肩代わりしだすタイトル・トラック"Crazy Trip"など、様々なスタイルが試行されており、そして美しい。


Vangas - Vangas
アトランタの4人組ノイズ・ロック・バンドVangasのセルフ・タイトル2nd。インダストリアル~ノーウェーブの不協和音、ミニマリズムとポスト・ハードコアの品のなさを愚直に全うしている有難いバンド。パンデミックがなければ数年前にリリースされる予定だったアルバムだったらしく、全7曲のうち4曲は2020年に発表されていたシングルの新しいミックスもしくはリミックスverである(そのぶん音はかなりエッジーかつクリアに改善されている)。現在、さらに新たなアルバムを仕上げている最中だという。普通に売れてほしいです!


Wandering Years - Mountain Laughed
ブルックリンのミュージシャンGene Stromanを中心としたスロウコア/インディ・フォーク・プロジェクト。例によってRed House Painters, Low, Songs: Ohia, Elliott Smith等のサッドな90sインディーに強く影響を受けているという。ミックス&マスタリングをHorse Jumper Of Love作品を手掛けるBradford Kriegerに依頼しているのも非常に合点がいく。出したい音と感情が明確。僕はもちろんメランコリー大歓迎!前作にあたる『Wandering Years Retirement Community』でアメリカの60sカルト・フォーク歌手Jackson C. Frankの"Relations"をスロウコア・アレンジでカバーしていて感心してしまった。みなさんもJackson C. Frank聴きましょう!素晴らしいので。

以上!8月の振り返りでした。
ついでに先月読んでよかった本
・永井玲衣『水中の哲学者たち』(晶文社)
・ナンシー・フレイザー『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』(筑摩書房)
・森山至貴、能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』(朝日出版社)
・ダニイル・ハルムス『ハルムスの世界』(白水社)